
「救急車が来たら、何をすればいいの?」
「情報が多すぎて、自分の判断に自信が持てない…」
など、救急の現場で緊張することはありませんか?
次々と患者さんが運ばれてくる救急外来では、生命維持に直結する項目を最優先で判断しなければなりません。
そのための共通ツールがABCDEアプローチです。
この記事では、搬送直後のわずかな時間で実践できるABCDE評価のポイントを、私の経験を交えて分かりやすく解説します。
この記事を読めば、まずどこを見て、次に何を動くべきかの優先順位が整理され、自信を持って受け入れができるようになります。
- 救急外来に配属・異動したばかりで、受け入れに不安がある方
- 「まず何を見て、何を報告すべきか」優先順位を知りたい方
- ABCDE評価の具体的な観察の視点を整理したい方
救急外来で「どの患者さんから優先して受け入れるか」を判断する院内トリアージの基準にも、このABCDE評価が深く関わっています。
トリアージの仕組みや実践方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
ABCDE評価とは?救急で使われる基本の考え方


ABCDE評価は、救急や重症患者さんの対応において生命を脅かす異常(死の兆候)がないかを素早く判断するプロセスです。
一般的な病棟では検査をして診断名が決まってから治療・ケアが始まります。
しかし、1分1秒を争う救急外来では、診断名がつくのを待っていられない場面も多くあります。
そのため、まずは安全な状態かどうかを確認し、命に関わる順(A→B→C→D→E)に評価を進めていきます。
最大のポイントは、Aから順番に評価し、異常があればその場で対応(処置・報告)することです。
異常がある=命の危険がある状態なので、その問題を解決(治療・ケア)してからでないと、次のステップには進みません。
この評価と対応を繰り返すリズムこそが、救急対応の基本の考え方です。
ABCDE評価の流れと全体像:搬送受け入れの現場感


実際の評価は、疾患を診断するためではなく緊急度の判定のためにごく短時間で行います。
勉強するとはAから順に評価すると学びますが、現場ではこれらをサッと流れるように確認するため、同時並行で進みます。
接触してから救急室への搬送はほんの短い時間であり、わたしは先輩からから、5秒ほどで判断できるようにと指導を受けました。
異常を察知した際は、入室時に「C(循環)に異常あり!」「D(意識)が悪いです!」などチームに即座に共有します。
このように評価と報告をセットで行うことで、医師や他のスタッフも即座に次のアクションに移れます。
A:Airway(気道)|「声が出るか」が最大の指標
気道の評価で最も重要なのは、空気の通り道がしっかり確保されているかです。
観察のポイント
まずは患者さんに名前を尋ねます。
「はい」と返答や発声ができれば、ひとまず気道は開通していると判断できます。
危険なサイン
返答がない、いびきのような呼吸音(いびき様呼吸)、ゼーゼーという喘鳴、声の出しにくさなどです。
現場での対応
意識がなくても胸の動きがあり、呼吸音が静かであれば「ひとまず空気は通っている」と評価します。
ただし、意識障害がある患者さんはいつでも舌根沈下を起こす危険があるため、「いま静かだから大丈夫」と過信せず、常に気道の状態を注意しておく必要はあります。
B:Breathing(呼吸)|「呼吸の質と努力感」を見極める
気道(A)を確認したら、次は「正しく換気ができているか」呼吸の質を評価します。
観察のポイント
呼吸数や、肩で息をするような「努力呼吸」がないかを確認します。
唇や指先にチアノーゼ(青白さ)が出ていないかも重要な指標になります。
危険なサイン
「一文を話し切れず言葉が途切れる」「単語しか言えない」など、息が途切れたり、明らかにハァハァと苦しそうにしている状態です。
Aとの違い
AもBも呼吸に関する評価になるけど、Aは「通り道」ですが、Bは「呼吸の状態」で違いがあります。
接触時の見た目でパッと緊急度を判断し、ベッドに移ったら素早くSpO2モニターを観察して評価します。
C:Circulation(循環)|「ショック」を見逃さない
循環の評価では、全身に血液が送り届けられているかを確認します。
観察のポイント
手首の脈(橈骨動脈)に触れ、速さやリズム、強さを確認します。
危険なサイン
皮膚の冷感や湿潤(冷や汗)、顔面蒼白、橈骨動脈が触れない状態などがあります。
現場のコツ
A(気道)で声をかけるのと同時に手首に触れるのがポイントです。
接触時から評価を始めることで、ABの評価が終わる頃には、Cの評価もできます。
測定・対応
接触したら、橈骨動脈に触れます。
橈骨動脈が触れる=収縮期血圧80mmHg以上と評価できることが多いです。(だたし、これは目安であり、最近の救急医学では例外も多いため過信をしてはいけません。)
その後、救急室に入りベッドに移ったらすぐに心電図モニターと血圧計を装着し、数値の確認をしてショックの状態か評価します。
脈に触れるだけで予測した血圧は、あくまで目安(簡易的な評価)です。
ベッドに移ったら、必ず血圧計の数値と合わせて総合的にショック状態を判断が必要です。
橈骨動脈(手首)が触れる ➔ 収縮期血圧 80〜90 mmHg以上 [1]
大腿動脈(足の付け根)のみ触れる ➔ 収縮期血圧 70〜80 mmHg程度 [1]
頸動脈(首)のみ触れる ➔ 収縮期血圧 60〜70 mmHg程度 [1]


D:Disability(意識)|「脳の異常」を素早く察知する
循環の次は、中枢神経系(意識状態)に異常がないかを評価します。
観察のポイント
名前、場所、日付などを質問し、受け答えから意識レベル(JCS/GCS)を判断します。
危険なサイン
急な意識混濁、瞳孔の不同、麻痺(左右差)がある状態です。
現場のコツ
手首の脈を測り終わった流れで「私の両手をギュッと握ってください」と声をかけます。
これで意識レベルの確認と同時に、麻痺による握力の左右差もチェックできます。
※もともと脳梗塞などの既往で麻痺がある患者さんの場合は、いつも通りの麻痺(古い症状)なのか今回新しく出た麻痺(新しい症状)なのかを、以前の状態と比較して評価するのがコツです。
意識障害は低血糖によるものも多いため、必要に応じて血糖測定も視野に入れます。
血液ガスで血糖値も見れますが、結果が出るのに数分かかります。今すぐに確認したい場合は血糖測定器で確認する場合もあります。
DMの既往、食事できているかなど、それによっては準備が必要になる場合もあります。
E:Exposure(全身観察)|「見逃し」を防ぐ最後のチェック
一通りの評価が終わったら、最後は衣類を脱がせて全身をくまなく観察します。
ここは初心者が最も「やりきった」と安心し、見落としやすいステップです。
観察のポイント
全身の皮膚の状態(発疹や出血斑)、隠れた外傷の有無、腹部の膨隆などを確認します。
危険なサイン
背部(背中や臀部)などの隠れた出血や外傷、広範囲の皮疹(アナフィラキシーなどの湿疹)、異常な体温(高熱や低体温)にも注意します。
現場のコツ
救急車内では見えなかった患者さんの裏側を確認する作業です。プライバシーに配慮しつつも、保温に努めながら「全身を漏れなく見る」ことで、隠れた疾患のヒントを見つけ出します。
測定・対応
ベッドに移送後は体温測定を行い、必要に応じた加温・冷却を行います。
【シミュレーション】救急車を降りてから初療室に入るまでの「5秒間」の一例


救急外来での評価は、ストレッチャーを救急車から降ろし、初療室へ移動させるまでのわずかな時間で完結させます。
初期評価に正解・不正解はなく、パッと見た第一印象から判断が大事です。
ここでは、わたしの体験をもとに、接触からのABCDEアプローチのシミュレーションを再現した一例を紹介します。
接触時(0〜2秒):まずは顔を覗き込み、手首に触れる
救急車が来たら迎えに行きます。
救急車を迎えに行き、ストレッチャーが降りてきたら、まずは患者さんの顔を覗き込みます。すかさず手首の脈(橈骨動脈)に触れながら、こう声をかけます。
「〇〇さん、病院に着きましたよ!わかりますか?お名前言えますか?」
この「名前を聞きながら脈に触れる」という1〜5秒の動作だけで、以下の情報を同時にキャッチしています。
- A(気道): 返事や声が出ているか?
- B(呼吸): 苦しそうな表情や、肩で息をするような呼吸をしていないか?
- C(循環): 脈はしっかり触れるか。肌は冷たくないか、冷や汗はないか?
ここで名前がハッキリ言えて、脈も力強く、表情も穏やかなら、ABCの緊急度は低いいまのところ命の危機はなさそうかな。と瞬時に予測します。
移動中(2〜5秒):初療室へ向かいながら、さらに踏み込む
初療室へ向かいながら、さらに問いかけます。
この時、脈に触れながら、逆の手で軽く患者さんの手を握ります。
「ここがどこだか分かりますか?私の手をギュッと握ってみてください」
脈拍が遅い場合、脈が打つか確認する必要があるからです。脈が早いのか、遅いのかを確認しないといけません。
- D(意識): 受け答えで意識レベル(JCS/GCS)を確認。
- D(麻痺): 手を握る力で、脳血管障害などの麻痺の有無を確認します(※救急隊からの申し送りで事前に脳梗塞の既往を聞いている場合は、麻痺がないとされる側の手で握力を確認するのがコツです!)。
入室時(5秒〜):ベッド移乗と同時にチームへ報告
初療室のベッドに移す頃には、自分の中で『ABCDE異常なし!』という判断がついている状態です。
もし異常があれば、救急室のベッドに移ると同時に「Cが弱いです!」「Dの反応が悪いです!」とチームへ即座に共有します。
上記のシミュレーションは一例ですが、評価は一つずつ順番にではなく一連の動作の中で同時並行に行うのが、救急外来のリアルな流れです。
病院の構造によって、救急車を降りる場所から初療室までの距離や時間はそれぞれ異なります。
私が勤務していた病院は、2枚の扉を入るとすぐに初療室があり、接触から10秒以内で入室できる「救急車専用の入り口」があったため、このような超短時間のシミュレーションになっています。
廊下が長くて移動に時間がかかる病院などでは、これと全く同じ時間配分にはならないかもしれません。
しかし、声をかけながら脈に触れ、移動しながら意識や麻痺を見るという一連のルーティン(同時並行のやり方)は、どこの現場でも応用できます。
ぜひあなたの病院の動線に合わせて、この5秒の動きを取り入れてみてください。
ABCDE評価で看護師が意識するポイント


救急の現場でABCDE評価を単なるマニュアルの業務にせず、本当に自分を守り、患者さんを救う使える武器にするために、以下の3点を意識してみてください。
1. 「A」から順に、異常があれば立ち止まる
ABCDEは命に直結する順番になってます。
そのため、必ず『Aから評価する』『異常があればその時点で評価を中断し、その場で対応する』という鉄則を守りましょう。
例えば、接触時に気道の異常(A)があれば、まず気道確保や吸引、酸素投与などの処置を最優先します。
その問題が解決してはじめて、BやCの評価へ進めます。異常があるのに最後まで評価を進めると、治療が遅れてしまいます。
異常があれば、そこで立ち止まって解決することが、救急看護の安全性を支えるポイントです。
2. 「完璧」よりも「スピード」と「直感」
詳細なアセスメントや数値の分析は、ベッドに移動した後にじっくり行えば大丈夫です。
搬送直後のわずかな時間では、完璧な分析よりもパッと見の緊急性を重視します。
SpO2や血圧の数値を測定する前から、自分の目・耳・手で感じる「なんとなくヤバい気がする……」という直感(第一印象)こそが、迅速な救命への第一歩になります。
3. 一人で抱え込まない
救急外来には多くのスタッフがいます。
重症な患者さんであればあるほど、すぐに多くの医師や先輩看護師が集まってきます。
すべてを自分一人で評価し、判断しなければならない必要はまったくありません。
あなたが気づいた異常(危険サイン)を口に出して共有すれば、あとはチーム全員でABCDEに取り組むことができます。
何かおかしいと思えば、声を出せば大丈夫です。
私自身も自分の評価は正しかったのかと自信が持てないこともあります。
救急の現場はあまりに展開が早く、立ち止まって悩む暇もないほど、チーム全体が目まぐるしく動き出すからです。
でも、だからこそこの「ABCDE」という共通のモノサシを自分の中に持っておくことが大切です。
日々の受け入れでこの評価を意識して繰り返すうちに、少しずつチームの迅速な動きと自分の判断がつながる瞬間が増えて、救急看護がどんどん面白くなっていきます。
不安なときは「振り返り」と「フィードバック」を活用しよう


もし「今日の受け入れ、自分の評価で合っていたのかな……」と不安に思うことがあれば、一緒に勤務したスタッフと落ち着いてから話をしてみるのがおすすめです。
プチカンファレンスをする
事例を振り返ることで、自分の思考や行動のクセを見直し、これからの経験に役立てることができます。
先輩看護師に相談する
「あの時こう判断して動いたのですが、どうでしたか?」とフィードバックをもらってみましょう。
数々の現場を踏んできた先輩の視点を知ることで、自分では気づけなかった新しい発見が必ずあります。
一人で抱え込まず、周囲の経験を自分の力に変えていきましょう!
ABCDE評価はあなたの救急看護を支えるお守り


救急看護の基本であるABCDE評価は、患者さんに接触したその瞬間から始まっています。
救急での初期評価のポイントは以下です。
- 命に関わる順番(A→B→C→D→E)で評価する
- 異常があれば、その場で問題を解決してから次へ進む
- 「5秒の第一印象」で緊急度を察知する
最初は緊迫した現場の空気に圧倒されて、頭が真っ白になってしまうかもしれません。
でも、このABCDEというモノサシを持っておけば、どんな慌ただしい現場でも今、自分がすべきことが見えてきます。
まずは次の搬送を受け入れるとき、患者さんの顔を見て、名前を呼ぶことから始めてみてください。
あなたの救急看護が、そこから一歩ずつ変わっていくはずです。
参考文献
[1]橈骨動脈の触診による起立性低血圧対策








